廣野文男作品集~思い出の中から・悠久の郷~
絵・廣野 文男
文・上野 道雄
納豆餅
納豆餅は囲炉裏の熾(おき)火を寄せて、焦げないように餅をゆっくりと焙(あぶ)る。柔らかくなった餅を、母が黄な粉を敷いた半簠(はんぼ)の中で伸ばす。直径が10センチ以上もある大きな餅を、2枚3枚も重ねた。兄や父は4枚5枚も重ねた。そして、自家製の藁納豆に塩味をつけて餅に包む。丹波の元旦の朝は、納豆餅と梅茶で祝うのだった。古里では、母の捲いてくれたあのずしりと重い納豆餅を、捲(まく)り餅と呼んでいた。
更新日 平成20年2月22日
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