南丹生活

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湯浅勲『山も人もいきいき 日吉町森林組合の痛快経営術』

日吉町森林組合の痛快経営術

著者は昭和26年日吉町出身で、日吉町森林組合の参事を務める人物です。昭和62年以来、約20年間にわたって森林組合の改革や人材育成に務め、日吉町森林組合を全国的に注目される組織にまで育て上げました。

森林組合は森林所有者の出資によって運営されている協同組合で、林道・作業道の開設、森林管理、森林施業の受託、資材の共同購入、林産物の共同販売、資金の融資、森林災害共済、森林経営に関するコンサルティングなどの事業を行なっている組織です。しかし、日本の森林は荒れていると言われるように、日本の林業が衰退していることともあいまって、森林組合も必ずしも十全に本来の役割を果たしてきたとは言えない現状があるようです。そうした状況を目の当たりにしてきた著者は、森林組合が公共事業や官公造林に依存してきた構造を改め、組合員の所有する民有林の管理と森林コンサルティングを主力事業にして、森林を守り育てながら経営的にも利益を上げていく方向に転じる努力をしてきました。本書は著者がそうした自らの経験と知識を経営的な視点からまとめ上げたもので、労務管理や機械の導入などの組織の近代化、森林に関する知識と経験に裏打ちされた事業計画策定、人材育成、環境配慮や国土保全というヴィジョンまでを含めた森林組合経営の理念と方法が平易に説かれています。

日本は森林の国であり、森林の持つ二酸化炭素固定や水土保全という公益的機能を考えるだけでも森林を適切に管理する仕事がどれほど大切であるかは明らかです。南丹市は日吉町や美山町という森林地域を擁していますが、公益とビジネスと地域づくりを合致させる方向で努力してきた著者の所説は大変参考になるものであり、ひいては日本の林業再生の参考にもなるものでしょう。日吉町森林組合は多くの若者たちが生き甲斐を持って働ける職場になっているようです。職員は地元出身者よりも都会からのIターン組が多いようですが、それは決して悪いことではありませんし、経営的な展望が開けていけば森林組合のみならず林業そのものにも後継者が定着していくことになるでしょう。本書の内容はこれからの農業のヒントにもなると思います。

全国林業改良普及協会/平成19年初版

更新日 平成20年3月12日

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柴田敦乙・現代書林取材班『京都伝統工芸 名工と若き職人がつなぐ心と技』

名工と若き職人がつなぐ心と技

南丹市と経済産業省・京都府・京都の伝統工芸産業界が一体となって運営している京都伝統工芸大学校(当時は京都伝統工芸専門学校)を取材したルポルタージュです。

これまで伝統工芸の技術習得は一子相伝や「見て盗め」の徒弟制度など閉鎖的な環境にありましたが、京都伝統工芸大学校は一流の匠たちから伝統工芸の技術と心を体系的に学べるという画期的な教育システムを導入し、日本の伝統工芸の新たな拠点になっている学校です。本書は陶芸、竹工芸、京指物、漆工芸、石工芸、金属工芸、京人形、仏像彫刻、木彫刻・彩色、蒔絵の10章に分けて、同校の教育の現場や卒業生などを取材したもので、現代日本の伝統工芸を代表する一流の匠たちと全国から集まった様々な背景を背負った若者たちの熱い息吹きが伝わってくる本であるとともに、絶好の学校案内にもなっています。

現代書林/平成17年初版

更新日 平成20年3月16日

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浅見薫『心豊かな物づくりに向けて〜明日への伝統工芸』

明日への伝統工芸

著者は清水焼の陶芸家で京都伝統工芸大学校(当時は京都伝統工芸専門学校)の教授。本書は同校の「伝統産業論」のテキストとして書かれたもので、伝統工芸についての考え方、日本の伝統工芸の歴史、日本各地にある経済産業大臣指定伝統的工芸品、産業として見た伝統工芸などについて概説しています。

基本的な思想としては、大量生産の画一性ではなく、歴史や風土による個性、そして個々の職人の手仕事による個性にこそ伝統工芸の魅力があること――と同時に、これからの伝統工芸は、伝統的技術をしっかり伝承していくとともに科学的知識を適切に取り入れ、時代や消費者のニーズに応えて発展していくべきことを説いています。

資料編として京都の伝統工芸の概説も付されていて、現代日本の伝統工芸について総合的に学べる一冊です。

京都伝統工芸産業支援センター/平成17年初版

更新日 平成20年3月20日

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相川良彦・會田陽久・秋津ミチ子・本城昇『農村をめざす人々〜ライフスタイルの転換と田舎暮らし』

農村をめざす人々

農村や山村へ移住した人々の動機や移住後の暮らしなどについて社会学的調査を行なった本です。北海道の新得町と富良野市、山形県高畠町、京都府美山町(合併前)の4地域への移住者を対象に、全部で22人(家族を含む)、美山は7人(家族を含む)が取り上げられています。

田舎暮らしを目指す人々がどのような志向や考え方を持っているのか、その夢と移住後の現実、美山への移住者に見られる他とは違う傾向(都会に近い田舎である美山には、近畿圏から住環境を求めてやってくる人が多く、農家にならない人が多い)、また受け容れる側の地域住民は新規移住者に何を求めているのかなど、非常に興味深い調査結果が出されています。

美山町部分の執筆は埼玉大学の本城昇教授が担当しています。

筑波書房/平成18年初版

更新日 平成20年3月22日

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山本建三・岸哲男『丹波路』

丹波路

三丹(口丹波・中丹波・西丹波)の歴史と風土と暮らしを写真と文章のコラボレーションで綴った本です。写真は今や日本写真界の重鎮となった山本建三、文章は元毎日新聞社の出版局図書編集部長で「カメラ毎日」編集長だった岸哲男。古代出雲文化圏に属するという備後の山村に生まれた岸は、同じく古代出雲文化圏と関わりの深い丹波に強い親和性を感じながらこの地を歩き、叙述しています。

「生活はきびしいが、そこには先祖代々耕してきた黒い土とまぶしい日光とかぐわしい風があり、美しい蛇や山鳩のすむ山があり、いついっても山女魚のいる川がある。そうした風土自然のいとなみに、こんにちの少年たちは絶えてふれることがない。私はそのような故郷に生れて故郷を失った人間であるが、日本人の生命の源泉を知っているが故に、若者たちに私たちの郷土についてくり返し語らなければならない。私は丹波をそのような気持で書いた。」

多数収録されている写真は、四十年近い歳月を経てすでにその大半が懐かしいものになってしまっているかと思いましたが、意外なまでに今も変わらずに残っている風景が多く、山国丹波の悠久を感じさせられます。

丹波をテーマとした古典的著作であるとともに、丹波に対する共感と愛情を以て書かれた一冊です。

写真評論社/昭和46年初版

更新日 平成20年3月25日

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小畑弘『只管四十一年』

只管四十一年

著者は昭和3年に美山町高野に生まれ、京都師範学校(現京都教育大学)卒業後、北桑田郡の小中学校で約四十年間に亙って教鞭を取った教育者。本書は退職を前にして著された自分史です。

昭和23年の知井小学校をスタートに、平成元年に平屋小学校校長を退職するまでの四十一年間の出来事や教育実践が記録されていますが、郷土における教育に情熱を傾け、僻地における教育をテーマに、全身全霊を投じた教師生活であったことが伺えます。「学校を卒業する時、すべての子どもが教師との出会いに恵まれていたという感想をもってほしいものである。果たして私はどうであったか。この自分史の根底に、それへの問いかけをし続けてきたつもりである。」

著者は非常に向上心や好奇心が旺盛な人で、常に学ぶ姿勢を失わず、知的障害のある子供の教育などにも熱心に取り組んでいます。戦後の民主教育を担った世代でもあり、そうした歴史的な面からも興味深く読める本です。巻末に担任した児童・生徒氏名一覧、校長として卒業証書を授与した児童氏名一覧、四十一年間苦楽を共にした教職員氏名が付せられていて、その名簿が地域の歴史そのものを感じさせるのも感動的です。

小畑弘/平成元年初版

更新日 平成20年3月29日

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小畑弘『生涯現役〜職退いて十八年』

生涯現役

著者は平屋小学校校長を退職後、美山町をはじめ南丹地域や京都府の社会教育・文化財保護等の要職を歴任した人物。本書は退職時に著した『只管四十一年』に続く自分史の第二集に当たる本。

内容は生涯学習の推進・文化協会・図書館長・人権教育・文化財保護・村誌区誌町誌・地域振興・投稿論文・高齢者福祉など。著者は戦後の美山の文化運動のほとんどに関わっているため、美山文化運動史として読むことができる。

小畑弘/平成18年初版

更新日 平成20年3月30日

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「美山、伝承の旅」編集委員会編『美山、伝承の旅〜茅葺山村歴史の里』

美山、伝承の旅

美山の民話・伝承を29話収めた本。編集は文化指導者の小畑弘他、挿絵は画家の小野喜象、題字は書家の室谷一柊と、当時美山に在住していた文化人が協力して刊行されている。

内容は香賀三郎・木梨軽皇子などの神話的人物から江戸時代の菊姫・宮内清吉などの人物にまつわる伝承、知井八幡宮・海老坂地蔵・川上神社などの由来などで、挿絵も含めて文化の薫り高い一冊になっている。

美山町/平成6年初版

更新日 平成20年4月2日

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有馬敲『芦生の森』

芦生の森

芦生の森に棲息する鳥たちを主人公に、自然保護をテーマにした風刺文学作品。著者は京都府出身で同志社大学在学中から現代詩・評論・小説・翻訳など多岐にわたる文学活動をしてきた詩人です。

芦生の森をめぐるダム建設計画と反対運動、芦生の森の観光ブームとそれに伴う自然破壊などの社会的な話題も散りばめられていますが、綺麗事の自然保護ストーリーではなく、自然界の生態系秩序を生物の縄張りの世界と把握してその闘争の姿を描いた、どことなく恐ろしい雰囲気が漂っている物語です。子供が読めば森の意思のようなものを感じるであろう作品です。

未踏社/平成11年初版

更新日 平成20年4月3日

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芦生のダム建設に反対する連絡会『トチの森の啓示』

トチの森の啓示

昭和40年に関西電力が芦生にダムを建設する計画を発表してから、反対運動が地元住民や京都大学芦生演習林を有する京都大学の教員・学生などを中心に起こりました。芦生のダム建設に反対する連絡会は、京大の教員・学生たちによって昭和59年に旗揚げされた組織で、自主ゼミ「芦生ゼミ」を主宰し、翌年60年に『トチの森の啓示』の初版を刊行しました。本書は第4版で、初版以降の情報が増補されています(第3版までは未見)。

ダム建設計画をめぐる歴史的経緯・反対理由などの文章を中心に、新聞記事・公的文書などの資料が収録・転載されています。

芦生のダム建設に反対する連絡会/昭和62年第4版

更新日 平成20年4月8日

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