南丹生活

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渡辺弘之『由良川源流芦生原生林生物誌』

由良川源流芦生原生林生物誌

著者は京都大学大学院博士課程終了後、昭和41年に京大に芦生演習林に助手として赴任、以後6年間駐在した森林生態学者(京大名誉教授・農学博士)。ちなみにこの6年間完全駐在の記録は、京大ではその後も破られていないそうです。芦生を離れた後も研究のためにしばしば入林し、平成11年〜13年には演習林長(芦生だけではなく京大が所有するすべての演習林の長)に就任、同14年に京都大学を定年退職後も芦生の森に関わり、調査活動を続けている芦生演習林の主(ぬし)のような存在です。本書は芦生の森を愛する著者が、昭和45年に『京都の秘境・芦生〜原生林への招待』を出し、同51年のその増補版を刊行して以来、約30年ぶりに改めて芦生の森の生態を総説した本です。

内容は芦生原生林の地理関係、生物相、自然観察コース案内などから構成されていて、この30年の研究の進展や森の生態の変化などの知見を加えて書かれています。温暖化の影響も含めた生態の変化によって、絶滅寸前種や絶滅危惧種が増えており、すでに芦生のみに生息していて絶滅した種もあるようです。そうした現状も踏まえた上で、芦生原生林の価値は現在益々高まっていると著者は述べています。また、住民や研究者の反対運動によってダム建設は撤回されましたが、地域振興策として認められた芦生原生林ツアーのブーム化は、芦生原生林を広く知らしめた反面、環境破壊に結びつくオーバーユースの状態になりつつあり、森のコアー部分への入林禁止や人数制限をする必要があると著者は指摘しています。

現在の芦生原生林の生態を紹介すると共に、芦生の自然環境をいかに守るかという観点からも書かれた一冊です。

ナカニシヤ出版/平成20年初版

更新日 平成20年5月28日

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宮秋算悟・織田明・片岡守『京都府茅葺民家写真集』

京都府茅葺民家写真集

三人の写真家が撮った京都府内の民家の写真を収録した写真集です。撮影地は丹波が最も多く、中でも南丹市美山町が圧倒的な数を誇っています。

茅葺民家の写真ばかりで丹波に暮らす私たちには見慣れたものですが、住人に放棄されて「日々の風雨に晒され、自然に朽ち果てていく有様の恐ろしい形相」も捉えられています。

古き日本の面影を偲ぶことができる一冊です。

片岡守/平成10年初版

更新日 平成20年5月29日

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福井章二・千鶴子『京の里山丹波紀行』

京の里山丹波紀行

事業をリタイア後、「京の里山・丹波路」をテーマに丹波の写真を撮り続けている夫妻の写真集です。嵯峨野・越畑・花背など山城と丹波の境界から、亀岡・瑞穂・京北・福知山など京都丹波と、兵庫丹波や大阪丹波の能勢までを含む丹波の風景と自然を撮っています。南丹市域では美山の4枚のみですが、収められている写真は丹波に暮らす者にとって親しみ深い懐かしい風景ばかりです。

納得がいく1枚を撮るために夜明け前から同じ場所に何時間も粘って撮るというだけあって、まさに絵のような美しさの写真が多数収められています。章二作品は民家や棚田などの対象を明確に捉えたものが多いのに対して、千鶴子作品は客観的な風景ではなく色彩や形の面白さに関心が注がれていてズームアップのショットが多いという二人の個性の違いも見所です。

光村印刷/平成13年初版

更新日 平成20年5月30日

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山本卓蔵『芦生の森』

芦生の森

いわゆる風景写真ではなく、芦生の森の木々と花々を撮った写真集です。

京都という都市はそのすぐ北側に丹波の深々とした山林(北山・丹波山地)と茅葺民家が数多く残る村々を擁しているのですが、著者はその地理関係の驚きをあとがきで次のように書いています。

「京・四条河原町より30キロメートル足らずの、近くに位置しながら、この地は、千年、二千年の芦生杉を始め数多くの大木・巨木が林立する地域です。どうして大都市近郊にこれ程までに原生林ともいえる森が残ったのか? 私には大きな疑問でもあり、驚きです。その姿の一部でも都会で暮らす、皆様にお伝えしたい、その一心で取り組みました。」

写真集の頁を繰っていると、一つ一つの木や花が語りかけてくるようです。

東方出版/平成14年初版

更新日 平成20年6月1日

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広瀬慎也『芦生の森 The last primval forest in Western Japan』

芦生の森

著者は京都市出身で現在も在住している写真家。サブタイトルにあるように西日本最後の原生林とも言える芦生の森を撮った風景写真集です。山・樹・花・渓流など森の諸相が捉えられています。

※サブタイトルのprimvalはprimevalの誤植と思われます。

遊人工房/平成14年初版

更新日 平成20年6月3日

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広瀬慎也『芦生の森 The last virgin forest in Western Japan2』

芦生の森2

京都市で活動する写真家による同名写真集の続編です。著者は京都市内からバイクを走らせ、いくつかの峠を越え、芦生の森に通って、森での一期一会の出会いをカメラに収めているそうですが、一冊目よりも森の本質に深く分け入り、森の生命が伝わってくる写真集になっています。作品性も高くなっているように思われます。

遊人工房/平成11年初版

更新日 平成20年6月5日

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広瀬慎也『芦生風刻〜由良川源流の森』

芦生風刻

著者のライフワークである芦生の森を撮った写真集の最新作です。樹の写真が中心で、芦生の森の四季の移ろいをテーマにしていますが、森との対話ができている人が撮った作品という印象が伝わってくる写真集です。著者自身も、「四季おりおり、豊かに表情を変える自然の中で、ひとり身を置いて行う森との対話。何度も何度もそれを重ねてゆくうちにそこにあるものは単なる被写体ではなく、すべてがそれぞれに生命を持ち、森の中での存在意義を持っていることに気が付きました」と述べています。芦生の森の写真集は3冊目になりますが、著者の代表作と言えるでしょう。

サンエムカラー出版部/平成19年初版

更新日 平成20年6月6日

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フィリップ・ニーゼル他『茶事の贅沢12ヵ月 雪月花を愛でる 上巻』

茶事の贅沢12ヵ月 雪月花を愛でる 上巻

全国の茶室で行われた正午の茶事・雪見の茶事・暁の茶事・初釜の茶事・雛の茶事・祝いの茶事の紹介を中心に、いくつかのエッセイや対談を加えた茶道の本です。

「正午の茶事」は、日吉町四ツ谷の茶室拙鶴庵を本席に、亭主はフィリップ・ニーゼル(拙鶴庵若翁)、客として茶道研究者の古賀健蔵などを迎えて行われたもの。フィリップ・ニーゼルは、スイス人の実業家で、日本の伝統文化に通暁した茶人・数寄者として知られる人です。子供の頃から日本に興味を持ち、20歳で日本に留学、日本語・日本文学などを学び、仕事で再来日し、日本法人の役員などを務めて現在まで長く日本に居住、日本とスイスの友好にも尽力し、愛知万博のスイス館の副館長や関西日本・スイス協会副会長なども務めています。日吉町四ツ谷の庵は、庄屋の屋敷があったという二千坪弱の土地に、茅葺の江戸時代の農家を移築したもので、茶室拙鶴庵、アトリエ遊竹軒、土蔵沈寶などからなる美しい建築物です。本書には「正午の茶事」の他に、フィリップ・ニーゼルと古賀健蔵との対談も収められています。

清々しく華やかな茶道の贅沢な世界が、多数のカラー写真とともにたっぷりと味わえる一冊です。

世界文化社/平成4年初版

更新日 平成20年6月10日

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美山町役場総務課編『美山見聞録〜美山町勢要覧96』

美山見聞録

「MIYAMA TRAVEL DIARY 」と銘打って出された旧町時代の美山町の紹介冊子。

美山の暮らし・自然・観光・文化財・産業・特産品などが紹介されている。美山町は平成5年にかやぶきの里・北集落が国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けているが、このパンフレットはそのことも含めて美山の良さを自信を持って打ち出している明るさがあふれている。

美山町/平成8年初版

更新日 平成20年6月11日

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南丹市教育委員会編『ひと昔前の八木』

ひと昔前の八木

旧八木町の町史・町誌は、昭和25年の『八木町誌』以来、刊行されていなかった。八木町としての歴史を残しておくために、南丹市に合併した平成18年から町史編纂事業が開始され、それに伴って歴史資料の調査が行なわれた。本書はその時に出てきた昭和初期からの写真を、平成18年に八木公民館でパネル展示したものを冊子にまとめたものである。八木町史編さん事業歴史資料調査報告書第1集として刊行されている。執筆は南丹市教育委員会八木教育振興係・八木町史編纂事務担当嘱託委員の神村和輝・渡辺咲子。

昭和30〜40年代の写真を中心に、牛に唐犂を引かせた田起こし、農繁期季節託児所、大堰川を利用した八木水泳場、昭和35年の台風16号による水害など昭和期の八木の暮らしを記録した写真が収録されていて、往時を偲べる一冊である。

南丹市教育委員会/平成19年初版

更新日 平成20年6月15日

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